スクエアテーパーからホローテックII化

【完全ガイド】スクエアテーパーからホローテックIIへ!交換手順・費用・効果を徹底解説

スクエアテーパーからホローテックII化

テーパースクエアBB



はじめに:ミニベロの「心臓部」を交換して走りを激変させる


ミニベロのカスタムと聞くと、タイヤやチェーンリングを想像しがちですが、本当に走りの「質」を変える重要なパーツがBB(ボトムブラケット)です。


多くの完成車に採用されている「スクエアテーパーBB」は、信頼性は高いものの、剛性や重量面で弱点を抱えています。


この記事では、そのスクエアテーパーBBを、現代のロードバイクの主流である「ホローテックII」規格に交換する方法を、必要な工具、費用、メリット・デメリット、そして具体的な作業手順まで、網羅的に解説します。


「ペダルを踏んだ力が逃げている気がする…」 「クランク周りを軽量化したい!」


そんな悩みを持つ方は、この「心臓部」の移植手術にぜひ挑戦してみてください。




私と彼女 AIさんと私


なぜ交換する?ホローテックII化のメリット・デメリット


まず、なぜ手間とコストをかけてまで交換するのか、その明確な理由を見ていきましょう。


ホローテックII化の「4つのメリット」


【テーパースクエア 286.6g】
テーパースクエア


  • @ 圧倒的な剛性アップ(パワーロスの低減)
    スクエアテーパーが細い「軸」で支えるのに対し、ホローテックIIは太い中空の「パイプ」がクランクと一体化しています。

    これによりBB周りのねじれ(=パワーロス)が劇的に減り、ペダルを踏んだ力がダイレクトに推進力に変わります。

  • A 大幅な軽量化
    中身が詰まった鉄の塊であるスクエアテーパーBBとクランクに対し、中空(ホロー)構造のホローテックIIは非常に軽量です。車種にもよりますが、数百グラム単位での軽量化が期待できます。

  • B メンテナンス性の向上
    スクエアテーパーのクランク着脱には「コッタレスクランク抜き」という専用工具で強い力をかける必要があり、失敗するとネジ山を壊すリスクもありました。

    ホローテックIIは六角レンチ数本で簡単に着脱でき、清掃やメンテナンスが非常に楽になります。

  • C パーツ選択肢の拡大
    現代の高性能なクランクセットの多くは、ホローテックII(または互換規格)を採用しています。この規格に変更することで、将来的に様々なクランクを選べる「パスポート」を手に入れることになります。


知っておくべき「2つのデメリット(注意点)」


  • @ クランクセットも同時交換が必須
    BBの規格が変わるため、スクエアテーパー用のクランクは使用できなくなります。必ず「ホローテックII対応クランク」も同時に購入する必要があり、トータルコストが上がります。

  • A BB規格(BSA/ITA)の確認が必須
    ご自身の自転車のフレームが、一般的な「BSA(JIS)」なのか、一部のロードバイクで使われる「ITA(イタリアン)」なのかを確認する必要があります。間違った規格のBBは取り付けできません。
    (※ほとんどのミニベロはBSAです)



【費用と工具】交換に必要なものリスト

DIYで交換する場合の、おおよその費用と必要な工具一覧です。


@ パーツ費用(合計:約12,000円〜)


  • ホローテックII BB(約2,000円〜)
    シマノの「SM-BBR60」などが定番です。フレーム規格(BSA/ITA)を間違えないようにしましょう。

  • ホローテックII クランクセット(約10,000円〜)
    シマノのClaris、Sora、Tiagraグレードや、互換品など。クランク長(165mm, 170mmなど)やチェーンリングの歯数を選びます。


A 専用工具(合計:約3,000円〜5,000円)


  • コッタレスクランク抜き(着脱用)
    スクエアテーパークランクを外すための専用工具です。

  • カートリッジBBツール(着脱用)
    スクエアテーパーBB本体を外すための工具。シマノカートリッジ式に対応したものを。

  • ホローテックII BBレンチ(取り付け用)
    新しいホローテックII BBを取り付けるための工具です。「SM-BBR60」など小径のBBにはアダプター(TL-FC25など)が必要な場合もあります。


B 一般工具・ケミカル類


  • 六角レンチ(アーレンキー)セット(ペダル着脱、クランクボルト着脱など)
  • ペダルレンチ(固着したペダルを外す際に)
  • グリス(新しいBBのネジ山に塗布)
  • パーツクリーナー、ウエス(布)(フレームの清掃用)



【写真で解説】スクエアテーパーからホローテックIIへの交換手順


ここからは、具体的な作業手順を3つのフェーズに分けて解説します。


フェーズ1:旧パーツ(スクエアテーパー)の取り外し


  • 手順1:ペダルを外す
    左右のペダルを外します。

    右ペダルは逆ネジ(反時計回りで締まる)ではないので注意。左ペダルは逆ネジ(時計回りで締まる)です。
    (※注意!:ペダルは左右とも進行方向に対して逆=反時計回りで緩みます。ここは固定観念に注意)
    (安全のため:右ペダルは反時計回り、左ペダルは時計回りで緩みます

    左右のペダルを外します

  • 手順2:クランクを外す
    クランク軸の中心にあるボルトを六角レンチで外します。

    クランクボルトを外す

  • 手順3:コッタレスクランク抜きでクランクを引き抜く
    「コッタレスクランク抜き」をクランクのネジ山にしっかりねじ込み、中央の軸を回していくと、テコの原理でクランクがBB軸から引き抜かれます。

    クランクを外す

  • 手順4:BB本体を外す
    「カートリッジBBツール」をBBの溝に差し込み、レンチで回して外します。

    【最重要】BSA(JIS)規格の場合、右ワン(ドライブ側)は逆ネジです! 時計回りに回すと緩みます。左ワンは正ネジ(反時計回り)です。

    テーパースクエアを外す


コッタレスクランク抜き


【最大の難関 BBの固着】


BBが固着して外れない場合 長年乗った自転車や、工場での締め付けトルクが強すぎる場合、BBが固着して外れないことが最大の難関です。


その場合は、無理をせずショップに頼むか、管理人シバが固着BBと格闘したこちらの体験談を参考に、より強力な工具の導入を検討してください。



フェーズ2:フレームの清掃と準備


  • 手順5:BBシェルの清掃
    BBが外れたら、フレーム側のネジ山(BBシェル)をパーツクリーナーとウエスで徹底的に清掃します。古いグリスや砂利が残っていると、異音や固着の原因になります。

  • 手順6:グリスの塗布
    新しいホローテックII BBの左右ワンのネジ山と、フレーム側のネジ山に、シマノのプレミアムグリスなどを薄く塗布します。これは将来の固着を防ぎ、異音を防止するために非常に重要です。

    グリスをしっかりと塗ります


フェーズ3:新パーツ(ホローテックII)の取り付け


  • 手順7:ホローテックII BBの取り付け
    BBの左右ワン(Rが右、Lが左)を確認し、まずは手でゆっくりと回し入れます。斜めに入らないよう慎重に。

    手で回らなくなったら、「ホローテックII BBレンチ」で締め込みます。ここでも右ワン(R)は逆ネジ(反時計回り)で締まります。

    シマノホローテックII 挿入

  • 手順8:クランクの挿入
    右クランク(チェーンリングと軸が一体化している側)を、BBの穴にゆっくりと差し込みます。

  • 手順9:左クランクの取り付け
    左クランクを軸の溝に合わせて差し込みます。脱落防止のストッパーピンがある場合は、それを押し込みます。

  • 手順10:トップキャップの締め付け
    クランク軸の先端に専用工具(TL-FC16など)でトップキャップをねじ込み、クランクの「ガタ」がなくなる程度に軽く締め付けます。(ここは強く締める場所ではありません)

  • 手順11:左クランクのボルトを締める
    左クランクアームにある2本のボルトを、六角レンチで「均等に」少しずつ締め込んで固定します。

  • 手順12:ペダルの取り付け
    外した時と逆の手順でペダルを取り付ければ、作業完了です。



まとめ:BB交換は「費用対効果」が最も高いカスタムの一つ


スクエアテーパーからホローテックIIへのBB交換は、クランクも同時に交換する必要があるため、初期費用はかかります。


しかし、それによって得られる「剛性アップによるパワー伝達の向上」と「大幅な軽量化」、そして「メンテナンス性の劇的な改善」は、他のどのカスタムよりも走行性能へのインパクトが大きいものです。


最大の難関である「固着したBBの取り外し」さえクリアできれば、あとは手順通りに進めるだけです。


この記事を参考に、あなたのミニベロの「心臓部」をアップグレードし、新しい走り心地を手に入れてください。